はじめの一冊は、高校生の時に衝撃を受けた本、そして今も時にふれて読んでいる本がふさわしいと思います。
それは、トールキンの『指輪物語』です。最近では、原題の『ロード・オブ・ザ・リングス』の方が有名かもしれません。このタイトルの、ハリウッドの大作映画は、ご存じの人も多いでしょう。
もちろん、その映画も見ました。DVDも持っています。しかし、私の中では、依然として『指輪物語』のほうがしっくりくるのです。
『指輪物語』は、作者トールキンが創作した世界と歴史・文化を舞台とした壮大なファンタジーです。正直言うと、この本に出会うまでは、ファンタジーは子供向けの楽しい物語でしかなかったのですが、この本は新しい価値観を提供してくれました。
それは、リミットのない想像力の世界。推理小説でいかに優れたトリックを使おうと、それは人間ができること、そして我々の現世界に存在する物に限られます。SF小説では、科学的なフィクション、つまり将来的に我々が可能にするであろうことを想像して描かれ、時代小説には、当然のことながら、当時の設定が厳守です。
このような、“リミット“を守らなければ、読者に説得力を与えないし、「何でもアリ?」なんておもしろくない。
では、『指輪物語』はどうでしょう? 初めて読んだ方は、まず本からあふれ出る新しい言葉の奔流に、圧倒されるでしょう。地理の設定もしっかりしており、物語の前提となる神話まであり、その世界観は長い小説を読み進めても、少しも揺らぎません。「何でもアリ」は、新しい世界の中では、当然の事象として納得させられ、まさに、実在する第2世界を進むような気持ちになります。
物語は、ホビット、エルフ、ドワーフ、人間の4種族の冒険。神話の時代から続く「一つの種」がふくらみ、大きな転機となって、その世界を揺るがす大きな「悪」となります。そのきっかけとなる「指輪」を巡って、さまざまな種族や国々が戦う大河小説で、戦いがあり、恋があり、別れがあって、息もつかせず展開していきます。
さまざまな時や場所から起こることが絡み合い、多くの伏線となっていきますので、何度読んでも、読む度に理解が深まっていくことが楽しい。世界中に熱狂的なファンがたくさんいるのも納得です。
愛読書…というからには、大型愛蔵版『カラー新版 指輪物語』がふさわしい。もちろん、はじめて読むなら一般的な文庫本『文庫 新版 指輪物語 全10巻セット』 (評論社文庫) がおすすめですが、この愛蔵版はアラン・リーの絵が多数掲載しており、なんとも美しい本です。机に向かってゆったり読書すると、なんとも贅沢な気分・・・実際、高くて贅沢な本なのですが。
→大型愛蔵版『カラー新版 指輪物語』
→『文庫 新版 指輪物語 全10巻セット』
また、『指輪物語』はイギリスのBBCが制作したラジオドラマのCDも発売されています。映画でビルボ役でしたが、こちらではフロド(ビルボの養子)です。BBCの方が古く、原作に忠実に再現されていてファンの間では定評がありますので、映画化されたとき、この配役を見てニヤリとしたものです。
→『The Lord of the Rings BBCラジオドラマ版 (英語) CD』
→『ロード・オブ・ザ・リング&ホビット 劇場公開版 ブルーレイ コンプリート・セット』
さぁ、書いていたら、また読みたくなってきました。
でも、本を開いてしまったら、今日は何もできなくなるかも。。。
(2010年3月初出、2024年9月加筆修正)