夕月の本棚

新旧いろいろ、ノンジャンルで本をご紹介します

共に旅する愛読書!! 『千一夜物語』

旅に本はつきものです。飛行機や電車の中で、カフェで、ホテルの夜でとかかせません。特に、一人旅、言葉に不自由する外国の夜に、もし読む本がなかったらと想像するとぞっとします。・・・私は完全に活字中毒です。

 

旅にあわせて、本を選ぶのも楽しい。のんびりしたいリゾートや温泉では、長編のエンターテイメント小説を、歴史的な土地へ行くなら、その土地に関する本などなど。日本なら、その土地の本屋で購入するのも必須です。

 

そして、海外。これが難しい。もちろん、海外でも本屋は必須です。しかし、読まない本をあまり買ってもしかたないし(筆者の英語は児童書レベル、他言語は昔学んだ仏語も独語も記憶はなるか彼方)。。。結果として、写真集的なものや、簡単に読めそうなエッセイ的なもの、絵本や画集などになってしまいます。

・・・そういえば、昔バリのホテルのショップで、ハーレクイン(ペーパーバック)を買ったことはあったな~。読むモノがなくて、とにかく、何でもイイから本を!という状態だったので。でも、ハーレクインは好きなんだけど、残念ながら、ハズレ率も高いから。

 

海外旅行で本を読もうと思ったら、やっぱり日本から持って行くのが確実です。

しかし、旅は少しでも荷物を減らしたいし、かといって、途中で読む本がなくなっても困ります。また、旅先では「ハズレ」本を読むのはいやなので、はじめて読む本は1~2冊程度にしておきます。ということで、私には海外旅行の定番があるのです。

 

ちくま文庫のマルドリュス版『千一夜物語』

かなり古い本ですが、電子版(Kindle版もあります!)

 

ひょっとしたら、アラビアンナイトといった方が、馴染みがあるでしょうか?全10巻あり、1冊が分厚く、しかも文字が細かくてびっしり。

・・・最近の本は、文庫本であっても、やけに文字が大きく、行間がスカスカな本が多く、確かに読みやすいかもしれませんが、あっという間に読み終わってしまって、活字中毒者には不満もあります。

 

この『千一夜物語』はとにかく読み甲斐があります。后が王に毎夜、世界中の不思議な話や冒険譚などを語る話という設定ですが、要するに、アラビア世界の昔話集です。短い話も、何夜にも分けて語る話もあり、魔神が出てきたり、盗賊が出てきたり、絶世の美女も、悪女も、さまざまな物語がたくさんでてくるのです。

有名な「アラジンと魔法のランプ」もこの中の1話。

 

この本の良さは、翻訳者にもあると思います。無理に日本的に言葉を換えていないこと。アラビアの雰囲気をそのままに、日本人が読んでもわかりやすくなっていて、まさに名訳だと思います。個人的には、「魔神」にジンニー、「鬼神」にイフリート、「平安」にサラームなどと、ルビがふってあるのもうれしい。たしかに、ジンニーやイフリートの方が、雰囲気が出ると思いませんか?

 

短編集的ですので、細切れに読んでもいいし、何度読んでも、飽きると言うことがありません。ということで、ぼろぼろになりながら、この愛読書は何度も私と共に海を渡っています。最低でも1冊、多いときは4~5冊。日本に帰ってから、続きを読むことはあまりしません。次の旅で、また次の1冊という感じ。

そうしながらも、トータルでは、何度読破しているか、自分でもわかりません。

はじめて買って読んだときは学生でしたし、一気に読みましたが、以後は本当に細切れ。

 

もともと、民話や神話、説話が大好きなんです。歴史が好きな人間なら、そちらもぜひ読むべきです。今昔物語もいいし、ギリシャ神話もいいし、インドのマハーバーラタもいい。実際の歴史は、スーパーヒーローも魔法も難しいですが、語り継がれている物語の中にも、真実が見え隠れしているはずですし、なによりも、ロマンあふれていて、単純に楽しい話が多いです。

 

千一夜をすべて読むのは、大変かもしれません。でも、1冊だけ読んでみても、十分に楽しめると思います。

 

 

(2010年6月初出、2024年10月加筆修正)

 

 

追記。。。

愛読書のマルドリュス版は、あまりにもボロボロになってしまって、寝っ転がって読んだら、埃などが目に入りそうで、読めなくなってしまいました。。。昔、古い本を整理していて、アレルギーを起こして、皮膚科に通ったことがあるのでね。それで、最近ではそんな本は、どんどん電子化することにしています(捨てられないから!)

・・・ということで、今は愛用のkindle Fireに入って全10巻がいつも持ち歩ける!!!

かわりに。。。バートン版の千一夜物語(こちらもちくま文庫)を購入予定!

 

追記2。。。

ジョゼフ=シャルル・マルドリュスは、19~20世紀フランスで活躍。マルドリュス版のアラビアンナイトは、日本のフランス文学者が愛読し、翻訳された(アラビア語から日本語版に翻訳されたのではなく、マルドリュスがフランス語でまとめ、それを日本語に翻訳した名著である)。

リチャード・バートンは19世紀イギリスで活躍。バートン版のアラビアンナイトは、最も収録物語数が多く、完備した版とも言われる。

 

 

 

COPYRIGHT © 2024 夕月 ALLRIGHTS RESERVED