最近、小説といえば、歴史ものかファンタジー、ミステリーばかりで、現代文学的なものとか、恋愛小説とかはめっきり読まなくなりました(ハーレクインやラノベはのぞく)。
・・・なんででしょうかねぇ、感情移入できないからでしょうか。直木賞作品とか、まして芥川賞作品なんて、おもしろいとはなかなか思えないものが増えてきたし、まして、感動するなんて、正直言えば、程遠い。ま、「ふーん」か「まぁまぁ」ぐらいなんですよね。つまらないばかりではないんですよ、もちろん。ただ、数ある本の中の1冊として、読み終わったら、すぐ忘れてしまうくらいなだけ。翌日まで引きずるような、読み終わっても尚、手元に残って数日はパラパラめくってしまうような興奮がなかなか・・・ね。
・・・あくまでも、個人の感想です。お怒りにならないでくださいね。
一方で、小説家の書くエッセイとか紀行文は大好きです。
やはり、文章が上手いし、感性も鋭い方々。読むと思わず惹きつけられるものも多いです。
例えば、江國香織。
江國香織と言えば、女性に大人気の小説家。特に恋愛小説に定評があり、共感する女性も続出・・・。というのが一般的なイメージでしょうか。
しかし実は私、恋愛小説って、どちらかと言えば苦手です。ですから、江國さんの小説も特に有名な数冊程度しか読んでいませんし、おおよそファンとは言い難いです。
この本はむしろ例外的。偶然本屋で見かけて、そのタイトルにぐっときてしまったのです。
江國香織 『絵本を抱えて部屋のすみへ』 新潮文庫
・・・えっ? なんで絶版なんだ? せめて電子化くらいすればいいのに。
さて、それでも推しますよ!
このタイトル・・・はじめて江國さんの言葉に共感したんです。
私もそんな子供だった。「だった」というか、今も現在進行形でそんな人間です。
ですから、激しく共感してしまったのです。と、同時に、ワタシの子ども時代の風景がパパッと浮かんでくる。
新しい本をもらって、図書館から借りてきて、お気に入りの本を抱えて……。うれしくてうれしくて、誰にも邪魔されないように、部屋の隅っこのにうずくまって、本を開く……そんな光景。
本には出会いってものがあると常々思っていますが、この本も出会うべくして出会ったのでしょう。読む前から、私はこの本に惹かれていたのです。
で、読み始めても、その共感は薄れない。
とにかく、今も昔も絵本が大好きな私は、目次をパラパラみただけで、「読んでいない本がある!!!」とか、「なぜわたしのお気に入りがはいっていない」とか、「ああ、昔好きだったよ、この本」とか忘れかけていた、子どもの頃の絵本を見つけたりと、読む前から忙しい。ひさびさにワクワクした気持ちでページをめくります。
そして、予想通り楽しく、予想以上に刺激を受けて、あっと言う間に読破しました。文章は美しく、テンポ良く、心地良い読み心地。自分が思っていたことを言葉にしてもらったうれしさを感じたり、思いもよらない発想の言葉に喜んだり。。。
エッセイとして、そして絵本ガイドとして、まさに良質の1冊です。
ちょっと、江國さんが好きになりました。もう少し小説のほうも読んでみようと思います。
(2014年11月初出、2024年10月加筆修正)