文字通り、「忘れた頃に……」でした。
『巷説百物語』シリーズの新刊は、熱心に追いかけているというほどでもないけど、書店で見かければ絶対買う本の一つ。
しかも、今回はいよいよ完結。
京極夏彦『了巷説百物語』KADOKAWA シリーズ7巻目
・・・もっとも、買ったのは怪談話にふさわしく夏だったんですが、読んだのは結構後。筆者は買うだけかって、後回しは珍しくないです。
それにしても、京極夏彦。
はまったなぁ、この作家さん。大ブームとなった、講談社ノベルスの「新本格ミステリ」の中でも、代表的な作家さんの一人。
このブーム、もう20年以上前になりますねぇ。筆者の本棚は一時期講談社ノベルスで棚板が潰れそうになりましたよ。。。中でも、京極夏彦の本は新刊が出る度に分厚くなっていって、「弁当箱」とか呼ばれましたね。。。懐かしい。
でも、今回はそのミステリではなく、ミステリから時代劇へと移行した頃の作品。
シリーズの最初は1999年。
京極夏彦 『巷説百物語』 角川文庫 シリーズ1巻目
結構前ですねぇ。ちなみに筆者は初版の単行本持ちです。よく売れたんでしょうね~。ドラマ化もしたし、シリーズ化して、たま~にし数年に一冊ペースで新刊が出ていましたが、今回で完結だそうです。短篇だし一冊一冊で完結していたので、終わりのイメージはしていなかったですが。
実は筆者。ホラーが大の苦手です。小説も基本は読みませんし、映画は予告編だけでもダメです。
でも、この本はぜんぜん平気。
物語は、「百物語」を謳っていますが、別に妖怪ものではないので。ただ、1話完結の各タイトルは妖怪。江戸の町の闇をうごめく曲者たちの話。公にできない事件を金で請け負った、妖しげな行者紛いの悪党達が、あやかしの姿で解決をさせていきます。
・・・ようするに、必殺仕事人・・・ではないけど、悪が悪を打つ感じ。その決着の付け方が、なんとも味わい深いというか、すきっとしないというか……人間の業の深さが、江戸の闇と共に描かれています。
初めて読んだ当時は、新鮮さを感じた記憶があります。ミステリの京極夏彦らしさ、そして妖し(あやかし)という世界をテーマにした新しい分野の時代劇。
・・・この2つがミックスされていたから、新しさを感じたんでしょうね。ただし、残念ながら、今初めて読むなら、この新しさは感じないかと思います。1999年だから・・・と書き添えておきましょう。
近頃はめっきり、「怪し」「妖怪」の専門家のような感じになっている京極夏彦ですが、やはり原点であるミステリーが筆者は好きです。でも、このシリーズを筆頭に、京極時代小説はどんどん面白くなってきている気もします。もともと、こちらのほうが、ご本人は書きたかったのでしょうか。
なんだか、いろいろ考えていたら、かつての「新本格ミステリ」をいろいろ読みたくなってきたな~。
押し入れの奥(本棚には入りきらない分)を漁ってみるか。
もちろん、変わらず引き続き、京極夏彦の新刊をお待ちする日々です。
(2018年5月初出、2024年12月加筆修正)
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追記。シリーズ完結を機に、初出から加筆して、ここに改めて公開しました。新旧を読み直しましたが、当時と感想はあまり変わりませんね。相変わらず、面白いです。