前回記事に引き続き、まだまだ時代劇ブームが続いている筆者。新年の博物館(東博は1/2から)にいって、東照宮の冬ぼたんを長め、さらに不忍池の弁天堂に初詣! よし、上野を散策しますか!
ということで、それにふさわしい1冊。
『切絵図・現代図で歩く 江戸東京散歩』 人文社
20年以上前の本ですが、しっかりロングセラー。
この本以降、類似本がたくさん出ましたが、最初のこれが最も名著と思います。
この本には思い出もあって、とりわけ思い入れもあるのですがね……。
一昔前。まだ会社勤めしていた筆者は、親しくしていた先輩編集者(一回り以上年上)に言われました。
「あんた、この本を買いなさい。好きそうだし、あんたは買った方がいいよ」
それは、地図で有名な出版社・人文社の本。その先輩の知人である人文社の営業さんが売り込みに来たらしい。
“素直な”筆者は、逆らうことなく、すぐその本の購入を決めました。だって、その先輩は編集者としても社会人としても尊敬していたし、なにより、本のタイトルだけで、即決です。もう、筆者の本好きアンテナが反応していたんですね。
しばらくして、本が届き、改めてじっくりと見ました。
割と大判で幅の広い本で、左頁に江戸時代の古地図、右頁に同じ場所の現代の地図が掲載されています。
歴史好き、時代劇好きの自分としては、これが実におもしろい。
まずは、当時会社があって、よく歩いていた市ヶ谷~飯田橋~神楽坂あたりを見てみました。
川を基準にするとなんとか道を比べて見ることができます。それに寺は同じ位置にかなり残っていました。
あのあたりは、武家屋敷が密集していました。
鬼平犯科帳の火付盗賊改方は御先手組。地図に見ることができて、わくわくしてきます。
・・・この本は、歴史にロマンを感じたり、空想することが好きな人のためのものですから。
古地図と現代地図を見比べる本。今では珍しくないかもしれませんが、この本はその先駆け。地図の人文社が出したこの本は、画期的で、未だに突出していると思います。
記憶では、発売当初、書店で平積みにして目立つように置かれてはおらず、地図コーナーの書棚にひっそりとしていて、大きく話題になることはなかったと思います。特に広告宣伝もしていなかったのでしょう。
しかし、この本は徐々に売れ始めました。長く時間を掛けて、気がついたら、本屋で目立つ位置に置かれていたのです。
良い本・良い企画は、いずれ必ず売れるという、典型的な例だと思っています。
大手出版社のように、派手な広告をうたったり、多くの営業がローラー作戦を展開しなくても、良いモノは口コミだって、きちんと売れるのです。もちろん、地道な営業はあったでしょうが。
近年、日本人の読書離れが進んでいるとか、本が売れないとか言いますが、
いい本も少ないのでは、と自戒を込めて思います。
この『江戸東京散歩』は、今では、『もち歩き』版も出ています。
家で見るなら、大きな方が絶対おすすめですが、やはり手に持って歩きたい。
必然として、両方持つべき・・・好きな人ならね。
さて、今回もまずは大判で上野をチェック。そして、持ち歩き版を鞄にいれて、上野に繰り出しましょう!
(2010年3月初出、2025年1月大幅に加筆修正)